桜餅と言えば、春を感じさせる和菓子として多くの人に親しまれています。
ピンク色の餅に桜の葉が巻かれ、甘いあんこが包まれたその姿は、まさに春の象徴。けれども、実は桜餅には関東と関西で見た目や作り方が異なる2つの種類が存在することをご存知でしたか?
今回は、関東と関西で異なる桜餅の違いについて、見た目、材料、歴史的背景に触れながらご紹介します。
それぞれの地域に根付いた桜餅の特徴を知ることで、より深くその魅力を感じていただけることでしょう。
桜餅とは?
桜餅は、桜の葉で餅を包んだ和菓子で、春の訪れを感じさせる一品ですが、実際は一年を通して楽しむことができます。その名前の由来については、いくつかの説があります。
- 桜の葉で餅を包んでいることから名付けられた説
- 桜を連想させる餅菓子であることから名付けられた説
桜餅は桜の花をイメージしており、食紅を使ってピンク色に仕上げられています。
桜餅はひな祭りには欠かせないお菓子として知られていますが、実は元々ひな祭り専用のお菓子ではなく、ピンク色がひな祭りにぴったりだとされ、また男の子の節句に柏餅が食べられるのに対し、女の子の節句であるひな祭りに桜餅を食べるようになり、ひな祭りのお菓子として定着したとされています。
桜餅は大きく分けて、関東の「長命寺(ちょうめいじ)」と、関西の「道明寺(どうみょうじ)」の2種類があります。
関東の「長命寺」とは?
「長命寺風の桜餅」は、小麦粉などで作った薄い生地であんこを包み、塩漬けされた桜の葉で巻いたお菓子です。
発祥地は東京の隅田川沿いに位置する長命寺(東京都墨田区)で、1717年に門番をしていた山本新六が桜の落ち葉の掃除に悩まされていた際に思いつきました。
掃除をしている最中に、薄い皮であんこを包んだものを桜の葉で巻いて販売したところ、江戸で人気を博しました。その後、山本新六は「山本や」という店を開きました。
この店の正式名称は「長命寺桜もち」で、現在も元祖桜餅として広く知られ、時には「長命寺桜もち山本や」として親しまれています。
「長命寺風の桜餅」は関東地方全域をはじめ、東北地方や山梨県、静岡県、長野県などにも広まり、石川県、島根県、鳥取県など一部の地域でも主流となっています。
これらの地域では「桜餅」と言えば「長命寺風の桜餅」が一般的です。
関西の「道明寺」とは?
「道明寺」は、道明寺粉を使った皮であんこを包み、塩漬けされた桜の葉で巻いたお菓子です。
その名前は、道明寺粉が由来となっています。
道明寺粉は、大阪府藤井寺市にある道明寺というお寺で最初に作られたことからこの名がつけられました。
この粉は、もち米を水に浸して蒸し、乾燥させて粗く挽いたもので、戻すことですぐに食べられるため、元々は保存食として使われていたそうです。
道明寺粉で作る皮は粒々とした食感で、粘り気があり、しっかりとした食べ応えが特徴です。
「道明寺」は、関西をはじめ、北陸地方、四国地方、中国地方、九州地方、北海道などにも広まり、山形県や青森県などの一部地域でも見られます。
これらの地域では「桜餅」と言えば「道明寺」が一般的で、「道明寺餅」と呼ばれることもあります。
桜餅に桜の葉を塩漬けして巻く理由は?
桜餅に巻かれている桜の葉は塩漬けにされています。
生の桜の葉には香りがありませんが、塩漬けにすることで香りが引き出され、食べる時にその香りを楽しめるようになるため、葉が使われていると言われています。
また、桜の葉は生地が乾燥するのを防ぐ役割も果たしているのだとか。
さらに、なぜ桜の葉が選ばれたかというと、江戸時代には桜の木が水を清潔に保つと信じられており、桜餅に桜の葉を巻くことで、腐りにくくなり、長持ちするという考え方があったからだそうです。
まとめ
桜餅には関東と関西で異なるスタイルがあり、それぞれに独自の魅力があります。関東の「長命寺風桜餅」は薄い皮であんこを包み、桜の葉で巻かれたシンプルながら風味豊かな一品。
一方、関西の「道明寺」は、道明寺粉を使った粒感のある皮であんこを包み、しっかりとした食感が特徴です。
また、桜の葉が塩漬けで使われる理由は、その香りと、生地が乾燥しないようにする役割にあります。
さらに、江戸時代には桜の葉が腐敗を防ぐと信じられており、長持ちするために選ばれたと言われています。
どちらの桜餅も、それぞれの地域の文化や歴史が反映されており、どちらを選んでも春の訪れを感じることができます。自分の好みの桜餅を見つけ、ぜひその違いを楽しんでみてください。