鮭が豊富にとれる地域では、年末のお歳暮として「新巻鮭」を贈る習慣が定番です。
しかし、鮭があまりとれない地域に住む人々にとっては、あまりなじみがないかもしれません。
今回は、この「新巻鮭」について、その意味や歴史を詳しく掘り下げてみましょう。
新巻鮭とは?
「新巻鮭」は、鮭の内臓を取り除き、塩で漬けて乾燥させた保存食です。塩漬けにすることで鮭の水分が抜け、旨みが凝縮されて独特の味わいが生まれます。塩を抜いてから食べる人もいれば、そのままの風味を楽しむ人もいます。
この新巻鮭には、主に「シロザケ」という種類が使われ、日本国内でとれる鮭の多くがこれに該当します。ほかにも「マス」や「ベニザケ」などが使われることもあります。平安時代以前から存在したと考えられる保存食ですが、一般の庶民が口にするようになったのは江戸時代からです。日本全国に広まったのは鉄道網が発達した明治時代以降で、それ以前は鮭が獲れる地域でのみ消費されていました。
昔から鮭には「災いを避ける」という意味が込められており、さらに卵であるイクラは繁栄の象徴ともされていました。特に北日本の地域では、新年の正月に欠かせない縁起物や保存食として長く愛されています。
なぜ「新巻」と呼ばれるのか?
「新巻」という呼称には、いくつかの説が存在します。
- 塩漬けした鮭を荒縄で巻いたことから「荒巻(あらまき)」になったとする説
- 鮭に塩を粗く撒いたため「粗蒔き(あらまき)」になったとする説
- 鮭を藁で巻いたことが「あらまき」に変化したという説
- 新しい藁を用いて巻いたため「新巻(あらまき)」と呼ばれるようになった説
- 鮮度の良い鮭を藁で包み、運搬する際に「新巻(あらまき)」と名付けられたという説
江戸時代の後期には「新巻」という漢字が使われ始め、明治時代になると「新しい鮭」「新たに採れた鮭」という意味でも認識されるようになりました。
また、西日本では鮭の代わりに、鰤(ぶり)を塩漬けにした「塩鰤」が正月の食卓に並ぶことが多いそうです。それぞれの地域の魚を保存してお正月に食べることで、鮭は「災いを避ける」魚として、また鰤は出世魚として縁起の良いものとされ、広く親しまれてきました。