子どもの頃、夏休みに「ラジオ体操」に参加した経験をお持ちの方は多いのではないでしょうか。
ただ、広く知られているのは第1と第2のみ。ところが調べてみると、第3や第4の存在が噂されることもあります。
いったい全部で何種類あるのか、気になりますよね。
そこで今回は、ラジオ体操の起源と歴史をかいつまんで解説するとともに、夏休みの早朝に子どもたちがラジオ体操を行う理由についても触れていきましょう。
そもそもラジオ体操とは?
- 国民の健康増進・体力向上を目的に考案された、ピアノ伴奏付きの体操です。
- 現行バージョンは「三代目」と呼ばれ、ラジオ体操第1とラジオ体操第2が主に行われています。
- 学校の体育などでは第1のみ行うことが多い一方、第1と第2を続けて行う場合もあります。
- 体操の動きには「全身を使う動き」「上半身を使う動き」「下半身を使う動き」「屈伸やひねり」など、バラエティに富んだ要素が盛り込まれており、椅子に座ったままでも取り組めるようになっています。
- はじめての人でもわかりやすいよう、ピアノの伴奏に合わせてナレーションや掛け声が入るのが特徴です。
放送スケジュールは?
NHKでは下記の時間帯に、ほぼ毎日ラジオ体操を放送しています。
- NHKラジオ第1放送
- 毎日 6時30分~6時40分
- NHKラジオ第2放送
- 月曜~土曜 8時40分~8時50分
- 月曜~土曜 12時00分~12時10分
- 月曜~土曜 15時00分~15時10分
- NHK教育テレビ
- 毎日 6時25分~6時35分
毎朝流れているため、公園や広場などで地域の人たちが集まり、ラジオ体操を行う習慣が各地に根付いています。日本全国で約三千万人の愛好者がいるともいわれるほどです。
ラジオ体操の起源をひもとく
アメリカがルーツだった?
- ラジオ体操が生まれたきっかけは、1925年にニューヨークのメトロポリタン生命保険会社がラジオ番組で放送していた「Tower Health Exercise」。
- 1923年にアメリカへ派遣された当時の日本・簡易保険局(現・かんぽ生命)の課長が、この番組の体操企画を知り、日本でも似たような全国向け体操を作ろうと考えました。
昭和初期に「国民保険体操」誕生
- 帰国後の昭和2年(1927年)、**「日本国民の体格を向上させる運動を全国津々浦々で実施したい」**という考えがまとまり、誰でも簡単にできる体操の制作が決定。
- 昭和3年(1928年)、昭和天皇の即位記念として「国民保険体操」と名づけられた初代ラジオ体操第1が誕生。作曲は福井直秋です。
- この体操がNHKのラジオで放送され始めたことから、**「ラジオ体操」**として一般に定着しました。
初代~二代目までの流れ
- 昭和7年(1932年):初代ラジオ体操第2(作曲:堀内敬三)
- 昭和14年(1939年):初代ラジオ体操第3(作曲:橋本國彦)
- 戦時中は国民の体力強化という名目で、一日に4回も放送されていたそうです。
しかし終戦後、GHQから「一斉に曲に合わせて動くのは全体主義や軍国主義的」と見なされてしまい、一時的に自粛を余儀なくされます。
二代目ラジオ体操の誕生と終了
- 終戦後、運動を楽しむ機運が高まる中、**昭和21年(1946年)**に二代目の第1・第2・第3がスタート(作曲は服部正、深海善次、橋本國彦など)。
- ところが、
- 戦後の混乱で放送枠が安定しなかった
- 動きが複雑で専門的すぎた
などの要因でまったく普及せず、昭和22年(1947年)には放送が打ち切られてしまいます。
現在の三代目が落ち着いた理由
- 国民からの復活要望が高まったため、今度こそ子どもからお年寄りまで誰でも取り組める内容にしようという方針で新たに策定。
- **昭和26年(1951年)**に三代目ラジオ体操第1(作曲:服部正)、**昭和27年(1952年)**に三代目ラジオ体操第2(作曲:團伊玖磨)が完成し、放送再開。
- 三代目では第3が作られなかったため、いま正式にあるのは第1と第2のみとなっています。
- かつて存在していたラジオ体操第3は「幻のラジオ体操第3」と呼ばれることも。
歴代ラジオ体操まとめ
世代 | 第1 | 第2 | 第3 |
---|---|---|---|
初代 | 昭和3年(1928年) / 福井直秋 | 昭和7年(1932年) / 堀内敬三 | 昭和14年(1939年) / 橋本國彦 |
二代目 | 昭和21年(1946年) / 服部正 | 昭和21年(1946年) / 深海善次 | 昭和21年(1946年) / 橋本國彦 |
三代目 | 昭和26年(1951年) / 服部正 | 昭和27年(1952年) / 團伊玖磨 | なし |
- どの時代も第1は幅広い年齢層向けに優しい動きで構成。
- 第2は少しテンポが速く、大人向けの強めの運動という位置づけ。
- 第3はより複雑かつ高度な動作が含まれていたため、ラジオ放送で説明するのが難しく、結局定着しなかったと考えられます。
第3・第4は本当にある?全体数はどれくらい?
- 初代・二代目には確かに第3がありました。
- さらに「第4」や「第5」もネットなどで話題になることがあります。
ラジオ体操第4
- スポーツ用品メーカー「リーボックジャパン」が平成22年(2010年)にプロモーション企画として制作。
- 倒立からの開脚や、片足を高く上げるなど、とても真似できそうにない動きが満載の体操でした。
ラジオ体操第5
- 6人の女性が、どちらかといえばダンスのような動きで体を動かす動画が存在。
- 作成者や目的など詳細は謎に包まれています。
第6以降は?
- 存在が確認されておらず、公式にも何も言及されていません。
- もし上記を「ラジオ体操の仲間」と見なすなら第5まであると言えなくもありませんが、現在正式にあるのは第2までのみです。
なぜ夏休みにラジオ体操をするの?
- 子どもたちが長期休みに早起きしてラジオ体操を行うのは、生活リズムの乱れを防ぐのが目的とされています。
- **昭和28年(1953年)**から夏季限定で実施されている「夏期巡回ラジオ体操」が始まりで、今も「夏期巡回ラジオ体操・みんなの体操」として続いています。
- 朝6時30分からのラジオ放送とリンクさせ、日本各地の会場から中継されるラジオ体操の様子を聴きながら一緒に体操するのが恒例行事です。
冬休みや春休みにやらないのは?
- ラジオ体操は一年を通して流れていますが、子どもたちが集団で参加するのは夏だけ。
- はっきりした理由は諸説ありますが、
- 冬や春は夜明けが遅く、子どもが集まるのに危険を伴う
- 休み期間が比較的短い
などの見方があるようです。
ラジオ体操は「夏の季語」?
- 季節を表す言葉を集めた歳時記には「ラジオ体操」は掲載されていません。
- ただし、夏になると朝の公園で子どもたちが体操するイメージは強く、「夏の季語」として扱われることもあります。
まとめ
ラジオ体操のルーツから現代までをざっくり見てみると、初代・二代目には第3が確かに存在していたことがわかります。意外に思った方も多いのではないでしょうか。
夏休みの思い出と結びつきやすいラジオ体操ですが、実は1年を通じて毎朝放送されています。いつでも手軽に始められるので、早起きのついでに全身をほぐしてから一日をスタートさせるのも気持ちがいいですよね。
三代目以降は正式には第1と第2のみが残っていますが、こうした歴史の背景を知ると、朝のラジオ体操もまた一段と感慨深いものになりそうです。