「七草」と聞くと、多くの人は春に食べる「七草粥」を思い浮かべるかもしれません。しかし、秋にも「秋の七草」と呼ばれる美しい草花があります。秋の七草は、食べるものではなく、主に鑑賞や薬草として用いられ、古くから日本の文化に根付いてきました。本記事では、秋の七草の由来や特徴、覚え方、そして楽しみ方について詳しくご紹介していきます。
秋の七草の由来とその意味
秋の七草は、日本の風景に溶け込む7つの代表的な草花のことで、古くから季節の移ろいを感じるための風物詩として親しまれてきました。これらの草花は、主に野山で見つけることができ、手軽に手に入ることから、人々はそれらを愛でたり、薬として使用してきました。その歴史的背景には、奈良時代の歌人、山上憶良(やまのうえのおくら)が詠んだ歌が影響しているとされています。
万葉集に詠まれた秋の七草
- 一首目の歌:「秋の野に咲き誇る草花を数えると、七種類ある」という趣旨の歌。自然の美しさを繊細に表現しています。
- 二首目の歌:「萩の花、尾花(薄)、葛の花、撫子の花、女郎花、藤袴、朝貌(桔梗)」と、七草が一つひとつ挙げられています。これが今日の「秋の七草」の基礎になっています。
秋の七草の特徴と薬効
- 萩(はぎ):秋の訪れを告げる花。根は、咳止めや胃の痛み、下痢の緩和に使われます。
- 薄(すすき):「尾花」とも呼ばれ、風に揺れる姿が秋の風情を演出します。利尿作用があります。
- 葛(くず):葛粉は和菓子や料理に使われ、葛根湯の主成分としても知られています。
- 撫子(なでしこ):その可憐な姿は「撫でたいほどかわいい」と例えられ、むくみや血圧の調整に効果があります。
- 女郎花(おみなえし):「他の花を圧倒する美しさ」とされ、消炎作用があります。
- 藤袴(ふじばかま):花の形が袴に似ていることから名づけられ、血糖値の調整に効果的です。
- 桔梗(ききょう):青紫の五角形の花が特徴で、咳や喉の痛みに効きます。
秋の七草の覚え方
歌で覚える方法
リズムに乗せて覚えると、頭に残りやすくなります。
- 「おみなえし すすきにはぎに ききょうくず ふじばかま~に な~でしこ」
- 「はぎききょう くずふじばかま おみなえし おばななでしこ」
語呂合わせで覚える方法
- お好きな服は?:「女郎花、薄、桔梗、撫子、藤袴、葛、萩」
- ハスキーなお袋:「萩、薄、桔梗、撫子、女郎花、藤袴、葛」
自分で新しいパターンを考えるのも楽しいですね。
秋の七草を楽しむ季節とその魅力
秋の七草は、旧暦の7月から9月にかけてが楽しむ時期とされます。現代の暦では、9月中旬から11月初旬が見頃です。春の七草は「七草粥」として食べますが、秋の七草は鑑賞や薬草として用いられるのが特徴です。
昔の人々は、冬に備えて秋の間に多くの準備をしていました。薬草を使ったり、美しい花々を楽しんだりすることで、心と体の健康を保つ生活の知恵が息づいていたのです。
秋の七草の文化的意義と現代の楽しみ方
秋の七草は、単なる植物ではなく、日本の四季を楽しむための重要な文化です。その美しさは心を豊かにし、伝統的に大切にされてきました。現代でも、秋の七草をテーマにしたイベントや展示が各地で行われています。
また、野山で草花を見つけたり、ハーブティーやアロマオイルとして日常生活に取り入れることも可能です。こうした自然とのふれあいは、心のリフレッシュにもつながります。
まとめ
秋の七草は、日本の自然と伝統が織りなす美しい文化です。覚えにくいと感じる場合も、歌や語呂合わせを使えば楽しく記憶できます。この秋、ぜひ自然の中で七草を探し、その魅力に触れてみてください。四季の移ろいを感じながら、心豊かなひとときを過ごしてみましょう。