卒業式に制服第二ボタンを渡す理由とは何?その意味と由来【※なぜ?】

文化・行事

卒業式を思い出すとき、多くの人が胸を熱くするのが「第二ボタン」のやり取りにまつわるエピソードではないでしょうか。卒業証書を手にし、新しい道へと進む節目に、

  • 「あの人の第二ボタンが欲しい」
  • 「好きな子に自分の第二ボタンをあげたい」

と、心がそわそわした経験を持つ人は少なくありません。

なかには「卒業式の日には第一から第五まで、ありったけのボタンを全部渡してしまった」という、周囲から大人気だった男の子の話も耳にします。では、どうして卒業時に「第二ボタンを渡す」文化が生まれ、現在まで語り継がれてきたのでしょうか。さらに、第二ボタン以外のボタンにも何かしらの意味があるのかも気になるところです。

第二ボタンってそもそも何のこと?

学生服の詰襟(つめえり)には、通常5つのボタンが一直線に並んでいます。**「第二ボタン」**とは、そのうち上から2番目に位置するボタンのことです。詰襟とは、その名のとおり襟元を詰めて着用するタイプの制服で、首のところまでホックやボタンをきっちり留めるのが特徴です。男子生徒の制服として定着しており、通称「学ラン」と呼ばれています。

詰襟が主流だった時代には、この第二ボタンにまつわる甘酸っぱい青春ドラマが各地で繰り広げられていました。とくに卒業式の当日には、自分が好意を抱いていた相手や、想いを寄せてくれていた相手の間で、このボタンを交換するのが特別な儀式のように扱われていたのです。

「第二ボタン」に込められた意味とは

心臓に一番近いボタン

最も有名なのが、「心臓に近い部分だから大切な想いの象徴になる」という説です。詰襟の上から2番目はちょうど胸、つまり心臓に近い位置にあり、そこから「ハート(心)をあげる」という意味をもつようになったといわれています。

  • 第二ボタンを好きな人にあげる:
    「あなたに自分の気持ちを渡したい」「心を受け取ってほしい」というロマンチックな意味合いをもつ
  • 第二ボタンをもらう:
    「相手の特別な想いを手にする」というドキドキする行為

これは卒業式という、学校生活の終わりと新たな旅立ちの始まりを彩る大切な瞬間をさらに印象的にしてくれます。自分から渡す場合もあれば、相手が「ください」と言ってきてくれる場合もあり、どちらにせよ二人の関係に特別感が生まれます。

なぜ卒業式で第二ボタンを交換するようになったのか? 由来の諸説

第二ボタンのやり取りは、いつごろ、どのように始まったのか――実ははっきりとした記録はないようです。昔から語られる代表的な説をいくつか挙げてみましょう。

  1. 戦時中に始まった説
    日本が第二次世界大戦の末期、物資が不足していたころ、学生服そのままの姿で軍へ行かざるを得なかった若者たちがいました。戦地へ赴く際、別れのしるしとして「自分の分身」となるボタンを愛しい人に渡したというのです。

    • 第一ボタンを取ると襟元が開いて上官から叱責されやすいため目立ちにくい第二ボタンが選ばれた
    • 戦死して戻れないかもしれない不安と「想いを託す」という切ない気持ちが強く反映されている
  2. 映画から広まった説
    昭和35年(1960年)公開の映画『予科練物語 紺碧の空遠く』で、男女の儚い恋が描かれました。思いを告げられないまま戦地に向かう男性が、自身の軍服の第二ボタンを女性に渡すシーンが特に印象的だったといわれています。この映画をきっかけに「好きな人に第二ボタンを渡す」という習慣が日本中に広まったという説です。
  3. 「ハートをつかむ」説
    純粋に「心臓に近い場所にある」ということから、「好きな人の心(ハート)をしっかりつかむ」という意味合いが生まれたというものです。卒業式のタイミングで大切な思いを形にするにはちょうどよいロマンがあり、若い人たちの間で広がりを見せたのかもしれません。
  4. 「一番大切な人」を象徴する説
    第二ボタンそのものが「一番大切な人」を表しているという考え方もあります。上から2番目の場所が特別視され、「いつまでも大事にしたい相手にだけこのボタンを渡す」というロマンチックな解釈が根強く残っています。

「第一」「第三」など、ほかのボタンにも意味はあるの?

「第二ボタン」にまつわる話が有名ですが、実はほかのボタンにもそれぞれ意味があるという噂がささやかれています。世代や地域によって微妙に解釈は異なるものの、代表的には以下のように言われることが多いようです。

  • 第一ボタン:自分自身(あるいは親友、最も親しい仲間)
  • 第二ボタン:一番大切な人(あるいは想い人、恋人候補)
  • 第三ボタン:友人や知人(または兄弟や別の親しい人)
  • 第四ボタン:家族を象徴(地域や学校の文化によっては違う解釈も)
  • 第五ボタン:その他大勢、あるいは“他人”を意味する

一方で、「第一ボタンは親友を表す」「第四・第五は第二ボタンが取られたときの予備」「全部は第二ボタンの予備」というユーモラスな捉え方をしているところもあるようです。実際のところ、このような解釈は非公式の“お楽しみ設定”に近く、学校や人によってニュアンスが異なります。

ブレザー全盛期における「第二ボタン」事情

最近では、詰襟の学ランよりもブレザーを採用する学校が増加してきました。そのため、「第二ボタンをあげる」といった風習を聞いたことがない子どもたちも多いようです。そもそもブレザーはボタンの数が少なかったり、位置が詰襟とは異なっていたりして「胸に最も近い」場所がずれてしまうこともあります。

  • ブレザーの第二ボタンの位置:心臓よりも下、むしろおへそに近い…?
  • ネクタイやリボン、校章を渡すパターン:現代の学生の間では、ボタンの代わりにネクタイや学校のエンブレムなどを交換するケースがある

たとえば、

  1. 本命の相手にはネクタイを渡す
  2. 気軽に「記念に欲しい」と言ってくる友人や後輩には、ボタンや名札、書いていたペンなど愛用の小物を手渡す

といった「使い分け」をすることもあるそうです。詰襟のボタンほどロマンチックではないかもしれませんが、「好きな人に少しでも近づきたい」「特別な思いを形に残したい」という気持ちは、時代が移り変わっても変わらないのかもしれません。

まとめ:大切なのは「気持ち」をかたちにすること

卒業式は、これまでの学校生活を締めくくり、新しい人生のステージへと踏み出す重要なイベント。そんなとき、自分の気持ちや相手の想いを形で示す手段として、第二ボタンが重宝されてきたのは自然な流れともいえます。

  • 第二ボタンは「心臓に近いから特別」「一番大切な人を表している」といったロマンティックな意味をもつ
  • 戦時中や映画をきっかけに始まった説など、複数の起源が語られている
  • ブレザーの普及によりボタンの代わりにネクタイ、校章などを渡す人も増えている

その背景には、「大事な瞬間を共有し、相手との繋がりを形に残したい」という素朴な想いがあるのでしょう。伝統的な詰襟の第二ボタンを受け取る・渡す行為を体験した世代にとっては、いつまでも色あせない青春の思い出ですし、今のブレザー世代の学生たちにもまた、ネクタイやバッジなどの新しい“特別なもの”の交換というドラマが存在します。

「卒業式の日に何かを伝えたい」という気持ちは、昔も今も変わりません。ボタンであれネクタイであれ、贈り合う相手への思いがこもっていれば、どんなアイテムでも尊いものになるのではないでしょうか。大切なのは、相手を想う純粋な気持ち。その気持ちを伝えるきっかけとしての「第二ボタン」は、時を超えて語り継がれる青春の象徴として、これからも多くの物語を紡いでいくに違いありません。

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